ども!ファイナンシャルプランナー2級のまとんです。
日本では、「相続税が高い!3世代も相続すると、資産が無くなってしまう!」という説をよく聞きます。
これは本当なのか?具体的には何円ぐらい、相続で減るのだろうか?
気になったので計算してみました!!
※素人が計算したので、計算方法に誤りがある可能性があります。あくまで素人が書いた記事としてご理解ください。明らかな間違いがあればご指摘いただけると幸いです※
計算条件
この記事では、2世代にわたる相続について考えます。
まず、祖父母から親世代に相続をします。簡単のため、父は祖父母から相続し、母は何も相続しなかったと考えます。
このとき、父と母はどちらも55歳とします。
次に、30年後に父が85歳で亡くなるとします。片方が亡くなる状況を、相続の俗語で「没1」と呼びます。このとき、父の資産は母と子供に相続されます。子供は二人いるとします。
最後に、さらに5年後(女性の方が平均寿命が長いので)、母が90歳で亡くなるとします。「没2」です。このとき母は、5年前に父から受け取った資産を、子供二人に渡します。
最終的に、祖父母から受け取った相続金額が、子供世代(子1と子2の合計)にどれだけ残ったか?または、どれだけ減ってしまったのか?を評価します。
さらに後半戦では、父と母が、祖父母が亡くなってから自分が亡くなるまでの30年間に投資をして資産を増やした場合にどうなるか?について考えます。
そして最後に、100億円をもつ超資産家ではどうなるか?を計算して、結論を導きます。
投資無しの場合
ケース①1000万
ケース1では、祖父母から父が1000万を相続した場合を考えます。
祖父母から銀行口座の預金を受け継いだようなケースです。
30年後、父は85歳で亡くなります。没1です。父はこのときまで、祖父母から受け継いだ1000万を大事に残していました。
この場合、法定相続人は、母と2人の子供です。民法で定められた法定相続分の通りに相続すると、母が1/2の500万、子が1/4の250万ずつ相続することができます。(実際に誰が何円相続するかは、3人で協議して自由に決めることができますが、ここでは単純のため、法定相続分通りに相続するとします)
ここで、相続が発生したので、相続税を考える必要があります。
しかし、相続税には基礎控除があります。基礎控除=3000万 + 600万×相続人の人数。このケースでは基礎控除は4800万です。
1000万から4800万を引くと0円なので、ここでは相続税は0円です。
さらに5年後、母が90歳で亡くなります。没2です。母は5年前に父から受け継いだ500万を大事に残していました。
この場合は子にそれぞれ250万ずつ相続されます。基礎控除の4200万以下なので、相続税はかかりません。
結局、ケース1では、祖父母から相続した1000万を、全額子供たちに残すことができました。
日本の法律では、1000万程度の庶民的な相続では、税金は取られないということが分かりました。
ケース②5000万
次に、父が祖父母から5000万を相続するケース②を考えます。
祖父母がマイホーム(実家)を持っており、父に実家を引き継いだようなケースです。
没1では5000万です。法定相続分の通り、母に2500万、子に1250万ずつ相続するとします。
このとき、基礎控除の4800万を超えているので、相続税が発生します。
相続税の計算方法はややこしいので割愛しますが、母が10万、子が5万ずつ、相続税を納める必要があります。
ただし、母は相続税がかかりません。配偶者控除があるため、法定相続分(50%)までは相続税がかからないのです。お得ですね!
(仮に、子供がまだ幼くて、母が父の資産の100%を相続するとしたら、50%を超えた分には相続税がかかります。ただし、それでも1.6億円分は非課税となります。日本の法律では、ほとんどの家庭において、没1のときに夫婦間で資産を受け渡しても、相続税がかからないようになっています)
没2では、母から子に、1250万ずつ相続します。基礎控除以下なので、相続税は0円です。
結局、祖父母の5000万から、相続税10万ぽっちを失うだけで、4990万を残すことができました。
日本の法律では、マイホーム程度を相続しても、相続税はほぼかからないと言えます。
ケース③1億
次は、祖父母から1億を相続するケースを考えます。
祖父母が港区のタワマンを所有していたとか、開業医だったとか、外資系企業でバリバリ働いていたようなケースでしょうか。
没1では、子にそれぞれ157万の相続税が課されます。さすがに税金が大きくなってきましたね。まぁ、2500万を相続しているので、余裕で払えると思います。
没2では、子にそれぞれ40万の相続税が課されます。
結局、祖父母から相続した1億から、相続税395万を納めて、9605万を残すことができました。
日本の法律では、港区タワマン・開業医・外資系リーマンでは、相続税が数百万かかると、分かりました。
なんとなく、まだまだ問題は無い気がします。
ケース④5億
さて、いよいよハイソな世界に突入します。祖父母から5億を相続したケースです。
スタートアップ企業を起業してイグジットに成功した実業家とか、地主とか、政治家などが該当するのでしょうか。僕にとっては未知の世界です。
日本の相続税率は累進課税なので、どんどん税金が大きくなってきます。
没1では、子に3277万ずつ相続税が課されます。
すごいですね。「父が亡くなったら、子が3277万を支払わないといけない」という世界です。どうなってんだ。
父から相続した資産が全て現金なら問題ないですが、もしタワマンなど不動産を相続していたとしたら、3277万の現金を自分で用意して納税しないといけません。借金地獄です。
最近聞いた話で、「おじいちゃんから会社を受け継いだら、借金が3000万できた」と言っていた友人がいたのですが、時価総額5億ぐらいの会社を引き継いでいたのかもしれないな。
没2では、相続税は2460万ずつです。
このケースでは、祖父母から相続した5億から、1.15億もの相続税を支払う必要がありました。
おじいちゃんおばあちゃんの資産を、何も悪いことしていないのに、1億も消失してしまうのは、なかなか悲しいものがありますね。これが相続税か・・・。
投資アリの場合
さて、ここから後半戦です。
ここまでのケースでは、父母は相続した資金を大事に30年間も銀行で眠らせていたケースを考えてきました。
実際には、30年間もあれば資産運用するでしょう。お金はお金を稼ぐ力を秘めています。次は、資産運用したケースを考えてみます。
ケース⑤5億で、年利3%で運用
ケース④と同じく、祖父母から5億を相続するケースを考えます。
ケース④との違いは、父が死ぬまで30年間の間に、資産運用をする点です。
30年間あれば、年利3%で運用しても、3%×30年=90%も資産を増やすことができます。いわゆる「時間を味方につける」投資ですね。5億が、30年後には9.5億にも膨れ上がっています。
ここで、「3%」は複利ではなく単利で考えました。父は55歳であることから、株式投機などのハイリスク・ハイリターン投資をすることは現実的ではないと考えました。せいぜい、配当金目的の安定銘柄とか、アパート経営など、低リスクな単利3%で運用したと想定します。
没1では9.5億に膨れ上がっているので、ケース④よりも多くの額を母と子に相続することができます。
母は4.75億を相続します。配偶者控除があるので相続税は0円。やはり、配偶者控除はすごいですね。
没2までの5年間、母は父から引き継いだ年利3%の投資を維持して、5年間でまた少し資産を増やしました。没2時点での母の資産は5.46億です。
子の相続税は目ん玉が飛び出るような金額になっていますが、それでも結局、祖父母から相続した5億を、父母が大事に3%運用した結果、6.82億を子供たちに残すことができました。
世代間での相続としては、素晴らしい成功事例でしょう。
投資年利0~5%でシミュレーション
ケース⑤では年利3%で考えましたが、こうなると、色々な年利で考えてみたくなるものです。
年利を0%~5%で条件を振ってシミュレーションしてみます。
横軸は祖父母からの相続額、縦軸は父母からの相続額です。
プロットの色の違いは、親が存命中の運用年利です。0%は投資しなかったという意味です。5%は理想的なケースで、30年間も5%を維持するのはかなり難しいと思いますが、いちおうシミュレートしました。
黒点線は、祖父母からの相続税をそのまま相続できた場合の線です。黒線より下なら「相続で金を失った」、黒線より上なら「相続税に打ち勝ち、金を増やした」という意味です。
ちょっと線の間が詰まって見づらいので、黒線との差分をプロットします。
縦軸を、子の相続額ー親の相続額でプロットし直しました。見やすくなりましたね。
縦軸がマイナスだと金を失った、プラスだと金を増やせた、と解釈できます。
こうしてみると、投資をしない場合(0%)、「相続で大きく金を失うのは、1億円を超えたあたり」からだと分かります。日本の法律では、資産が1億円を超えたあたりから相続税を気にすればよいことが分かりました。
(なお、5000万以下で0に張り付く非線形な曲線になっている理由は、基礎控除(3000万+600万×相続人数)があるからです)
また、2億の資産があったとしても、1%の運用を維持することができれば、余裕で相続税に打ち勝つことができると分かりました。
このことから、2億レベルの資産を相続したのであれば、銀行で眠らせずに、年利1%でよいので運用すべきと言うことができるでしょう。よくあるのが土地を引き継ぐケースです。土地は放置すると1円も稼がない(むしろ固定資産税で金を消費する)ので、土地を残したいのであれば、土地を使って積極的に何か事業をやらないといけない、という知見を得ました。
資産家の場合はどうか?
では最後に、怖いモノ見たさに、資産を100億円まで広げてみます。
例えば、バチェロレッテ1代目の福田萌子さんのご実家は「室町時代から続く大地主」という噂があります。こうした真のハイソが該当すると思います。
先ほどのグラフの横軸を、単位を「億円」にして、100億まで拡大しました。
100億にもなると、投資無し(0%)では、資産の半分(50億円)も失ってしまうことが分かります。投資をしたとしても、3%程度の運用では資産は目減りしてしまいます。仮に5%で運用することができれば、相続税に打ち勝つことができます。
これが”日本の相続税の本気”、ということでしょう。「絶対に金持ちから金を回収してやる!!」という、日本国の強い意思を感じます。
室町時代から続く大地主の家は、500年間ぐらい、年利3%より高い効率で資産を活かしてきたのだろうなと思いました。(もちろん昔は法律が異なるので、ジョークです)
まとめ
今回、相続税について計算してみました。
- 日本で相続税を気にする必要があるのは、資産が1億を越えたぐらいから。1億であれば相続税は400万ぐらい。
- 5億あると、1億以上も相続税がかかってしまう。相続税に打ち勝つためには、年利1%でよいので資産運用すべし。
- 100億の真のハイソは、年利3%より高い効率で運用を続けているのだろう。
俺も真のハイソになりてぇな。
以上、メタラーまとんでした。
ではでは。