ども!まとんです。
今Twitterで話題となっている、4/12東大入学式での上野千鶴子さんの祝辞について、僕の感想を書きます。
一言で言うと、「Noblesse Obligeを実践せよという東大からのメッセージ」と感じました。
上野千鶴子さんの祝辞
祝辞の全文は東京大学のホームページで公開されています。
名文だと思うので、ぜひ、全文を読んでほしいところですが、時間が無い人のために簡単に内容を要約させていただきます。
内容は4部構成となっています。
- 女子学生の置かれている現実・・・昨年度に話題となった医学部入試の女子学生差別の話題や、今でも根強く残る親世代の「男子は大学、女子は短大」という発想、東大学生による集団性的事件と、それをテーマにした「彼女は頭が悪いから」という小説、東大女子が入れない東大インカレサークル、などのトピックを挙げて、性差別について話しました。
- 女性学のパイオニアとして・・・上野さんが40年前に女性学という学問(後にジェンダー研究として呼ばれる)を作り、東京大学で女性学を教えながら上野さんが実感した経験について話しました。
- 変化と多様性に拓かれた大学・・・頑張れば報われるという恵まれた環境を作ったのは周囲の努力である。自分の恵まれた能力と環境を、自分のためでなく、恵まれない人々のために使ってほしいという話をしました。
- 東京大学で学ぶ価値・・・これまでは正解を求める世界だったが、これからは正解のない世界に行く。どんな場所でも知を生み出していける力を、大学で身に着けてくださいという話をしました。
なぜ、話題となっているか
今、この祝辞が話題となっているのは、1部がフェミニズムの話題だったからです。
分量的にも1部が50%程度を占めています。
これを、入学式という保護者も来ている晴れ舞台で、祝辞として聞かされた新入生の中には、「わざわざ祝辞で話すべき内容ではない」と反発した人もいたようです。
確かにフェミニズムについては考え方が別れます。
しかし、改めて全文を読んでみると、主要なメッセージは3部と4部にあると僕は感じました。
Noblesse Obligeがメッセージの3部
Noblesse Oblige(ノブレス・オブリージュ) - 高貴さは義務を伴う
僕が好きな言葉です。
3部の内容は、大学受験を乗り越えて次のフェーズに行く新入生に対して、「これからはNoblesse Obligeを実践しなさい」=「自分の優れた能力や環境を、人のために使いなさい」という東京大学からのメッセージだと僕は感じました。
僕が好きな箇所を引用します。この部分は、僕の友達の多くも好きだと言っていました。
あなたたちはがんばれば報われる、と思ってここまで来たはずです。ですが、冒頭で不正入試に触れたとおり、がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています。そしてがんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったこと忘れないようにしてください。あなたたちが今日「がんばったら報われる」と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです。世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひと...たちがいます。がんばる前から、「しょせんおまえなんか」「どうせわたしなんて」とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。
あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。女性学を生んだのはフェミニズムという女性運動ですが、フェミニズムはけっして女も男のようにふるまいたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です。
例えば、「あなたは恵まれていたんだから、周りに感謝して生きていきなさい」と言われることがありますが、これでは不十分。
「あなたの恵まれた才能を、人のために使いなさい」これが東大生に求められる義務です。
既に東大を卒業して社会に出た僕としては、このメッセージが心に刺さります。
僕は、自分の能力を、人のために使えているだろうか?自問させられます。
いつも通りのメッセージを伝える4部。しかし、1~3部によって言葉の重みが増す
4部は、よくあるメッセージです。
僕のときは、東大総長の式辞で話していた内容だったと思います。
一言でまとめると、「受験勉強は正解があったが、これからは正解が無い世界になるぞ」ということ。
あるあるの内容ですね。
しかし、1~3部を話した後なので、言葉の重みが違います。
「正解が無い世界」として、女性差別という大きなテーマを1部でぶつけてきました。
(テーマが大きすぎて、話題となってしまった)
東大生がこれからの世界で相手にしていくテーマは、こういうことなんだぞ、と。
本当に正解が無くて、様々な思想の人がいて、言葉に出すだけでもニュースになりえて、炎上して、それに人生を賭けて戦っている人がいる。
そういうテーマに、これからは取り組んでいってください、と。
大学受験が終わった2か月後の入学式の場で、意識を切り替えてください、ということを伝えるのが、東大の意思だったのだと思います。
入学式で言ったことに意味がある
東京大学では、全学生が集まって総長などから言葉を聞く機会は、入学式と卒業式しかありません。
なので、この場で言うことに意味があった。
ここで言わないと東大の意思が伝わらなかったし、日本中が注目しうる場で言うことに意味があったと思う。
「入学おめでとう」なんて安い言葉を言われても意味がない。
保護者に対しても、「あなたのお子さんは、これからこういう世界を相手に戦っていくんです」というメッセージを伝えるのが、東京大学の意思だったのだと思います。
最後に、祝辞の中で僕が最も震えた箇所を引用します。祝辞の最後の部分です。
知を生み出す知を、メタ知識といいます。そのメタ知識を学生に身につけてもらうことこそが、大学の使命です。ようこそ、東京大学へ。
「ようこそ、東京大学へ」で震えました。
僕は卒業生として、東京大学が僕に期待することを、再認識し、これからも戦っていこうと思いました。
人のために。Noblesse Obligeを実践していきます。
以上、メタラーまとんでした。
ではでは
なお、補足ですが、上野千鶴子さんのメッセージは、Noblesse Obligeの他に、「がんばりたくてもがんばれない、恵まれない環境の人もいる。そのことをちゃんと理解してください」という重要なメッセージもありますが、この記事ではそちらにはフォーカスしておりません。
僕としては、Noblesse Obligeのメッセージの方が好きだったからです。