ども!まとんです。
巷で話題の映画「TENET」を見てきました。
非常に面白かったのですが、どうも気に入らない点が多かったので、映画を既に見た人向けにネタバレ前提で感想を書きます。
これから見る可能性がある人は読まないでください!!
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- まずTENETについて軽くおさらい
- 壮大な挟撃作戦と言うわりに1時間くらいしか差がなくてショボい
- 難解な映画と言うより、時間が足りないだけ
- 科学用語の使い方で「ン?」となる
- 映画としては純粋に面白い!
まずTENETについて軽くおさらい
僕は1度見た後、正直、ストーリーの全貌をよく掴み切れず、解説サイトを読んで内容を整理しました。
こちらの記事がよくまとまっていて参考になりした。
TENETのストーリーを要約すると、未来人(約100年後?)の野望を、近未来人(約5年後?)の組織TENET軍が阻止する話です。
未来人は、地球が衰えて住めなくなったため、時間を逆行できる回転ドアを作り出し、過去の地球に逃げることで生きながらえようとします。
しかし、回転ドアをくぐった後の逆行状態では、酸素ボンベが無いと息ができなかったり、過去の自分に会ったら消滅してしまうなどの不自由があります。
そこで、世界そのものを逆行させる「アルゴリズム」を達成することで、自分たちは不自由なく過去に逃げようとします。
しかし、アルゴリズムを達成すると、現行世界の生き物は呼吸できなくなり全員死滅します。
そこで、近未来人のTENET軍は、アルゴリズムを阻止すべく、自分たちも回転ドアを利用して逆行を駆使して戦います。
TENET軍は、映画の主人公が数年後に作り出す組織です。主人公は、近未来から逆行してきたTENET軍と協力して戦います。
未来人は、自分たちでアルゴリズムを達成させるのではなく、過去のちょうど良いところにいた(プルトニウムの回収現場にいた)セイターに依頼してアルゴリズムを実現しようとします。
アルゴリズムは9つのアイテムを揃えると実現できます。映画では、最後の一個であるプルトニウム241をセイターが入手し、アルゴリズムを達成する瞬間をTENET軍が挟撃作戦によって阻止する期間が映像化されています。
以上のストーリーは、映画を1度見ただけではほとんど理解が追いつかないのですが、落ち着いて解説サイトを読めば、そこまで難しくはないです。
ストーリーを振り返ったところで、僕が「微妙だなぁ」と思ったところを書きます。
壮大な挟撃作戦と言うわりに1時間くらいしか差がなくてショボい
TENETのクライマックスは、「セイターがアルゴリズムを達成する爆破時刻の前後10分間を狙った、未来と現在からの挟撃作戦」です。
前後のTEN minutesで挟むということで、TENの回文である映画のタイトルにもなっています。
確かに発想は面白いし、順行レッドチームと逆行ブルーチームが入り混ざる戦場シーンはめちゃくちゃ面白かったです。
ただ、冷静に考えると、現場の兵士からすると、大作戦という割には、やってることショボくないですか?
TENET軍の兵士の気持ちになって考えてみましょう。
近未来に、「セイターのアルゴリズム達成を阻止するんだ!」といつミッションを与えられて、回転ドアをくぐります。
逆行世界では順行の自分と会わないように、海上を航行する船の上で待機します。数年間も!
この間、逆行と順行の間の戦い方のトレーニング(映画で一瞬映りました)などして過ごします。
仮に5年逆行するとしたら、元の時間に戻るためにさらに5年かかるので、10年の月日がかかります。
世界を守るために、自分の人生の多くを犠牲にする兵士の決意は凄まじい。
レッドチームはブルーチームよりも、たかだか1時間長く逆行しただけ
で、ここからは僕の予想ですが、
そして作戦決行の日が近づいてくると、兵士たちはレッドチームとブルーチームのチーム分けをします。
作戦当日の爆破時刻をT時とすると、多分T+1時間くらいのタイミングで、レッドチームとブルーチームはお別れです。
お互いに「作戦がうまくいったら後で再開しようぜ」とか言い合って、しばしの別れを告げます。
逆行のブルーチームは、そのままT+10分からT時に向かって作戦を開始。
一方その頃、順行のレッドチームは、まだノホホンと待機していて、T時を過ぎてもまだ逆行のままで、T-1時間くらいになったら回転ドアをくぐって順行に戻ります。
で、準備を整えて、T-10分から作戦を開始します。
レッドチームとブルーチームはお互いに±10分から挟撃、というわけです。
つまり、レッドチームとブルーチームの違いは、どちらも5年ほど一緒に過ごしてきており、5年間逆行したのがブルーチーム。
最後にちょっと1時間くらい長めに逆行を続けて、5年+1時間を逆行したのがレッドチームです。
たかだか1時間の違いしかないわけです。
「壮大な挟撃作戦」というなら、例えば数年かけて未来と過去からタイミングを緻密に揃えた作戦をやってくれたらすごいのに、
たかだか1時間、ちょっと長めに時間を戻って、挟み撃ちにしただけですよ。
全然壮大ではなくないですか?
この作戦のために5年間も船の上で逆行していた事実の方が凄いですよ。
ここらへん、兵士の気持ちになって冷静に考えると、大して壮大な挟撃にはなっていないなーと思ってしまいました。
難解な映画と言うより、時間が足りないだけ
TENETは「一度観ただけでは理解できない。二度目の方が楽しめる映画」と言われていますが、これはストーリーをよく理解できないのが原因です。
ただ、僕からみると、これはストーリーが難解であるというよりは、説明が少ないだけだと思いました。
多分監督の好みなのでしょうが、TENETでは回想シーンのような説明臭い演出は一切なく、登場人物間の会話だけで話をドンドン展開していくようになっています。
その割に、「回転ドアで時間を戻れる」と言う重要な事実は後半でやっと出てきて、仕組みを理解する間がない。
これ、単純に演出が不親切なだけでは?と思ってしまいました。
もっと視聴者が理解できるような演出は出来たと思うけど、あえてやらなかったのだろうなと。
未来人が登場しないから分かりにくい
TENETで特に理解が難しい原因は、黒幕である未来人(約100年後)が映像として出てこないからです。
未来人の請負人であるセイターと戦うことになりますが、未来人は「未来の地球は荒廃して住めなくなったのでアルゴリズムを達成して過去に逃げたい」という思想があり、セイターは「どうせ自分の命は先が長くないからアルゴリズム達成して地球上の生物を全て道連れにしたい」と思っている。
両者の思想が異なるため、視聴者は「結局何のために誰と戦っているんだ?」と混乱してしまう。
このように、「黒幕は異なる時代にいて、直接は物語に関与してこない」作品としては、「彗星のガルガンティア」があります。
こちらの黒幕は過去ですが、「今戦っている敵の黒幕は実は古代人類であった」と言う衝撃の事実が物語の後半で明らかになる展開となっています。
古代人類は物語に直接は関与しませんが、古代人類が何を考え、どういう目論見で敵となったのかをちゃんと解説してくれるので、視聴者としては難解には感じません。(1クールアニメなのでたっぷり時間があるという差はありますが)
TENETは、黒幕の未来人も劇中の悪役セイターも、思想は実はチープというか、幼稚なので、ちゃんと解説すれば難解にならなかったと思います。
「逆行世界のアクションを理解する難解さ」と「ストーリー自体の難解さ」、せめて後者だけでもちゃんと解説すればよかったのに、と思う。
科学用語の使い方で「ン?」となる
TENETはタイムトラベルについて最新の物理学の知見を反映している、らしい。
それは良い。それは良いんだけど、どうしても「ン?」となってしまう科学用語がある。
アルゴリズム
まず、アルゴリズム。
本作のキーワードで、「9つの要素を集めたら世界そのものが逆行になる」という恐ろしい現象?であって、黒幕の未来人の野望であり、悪役のセイターが実現しようとします。
しかし、アルゴリズムというのは、計算するための順序や手続きのことです。
主にコンピューターの計算に応用されるもので、天才的なアルゴリズムを使えば膨大な計算が素早く終わったりする。具体的には、Google検索したときに、インターネット上の膨大な情報の中から欲しいページを一瞬で探し出したりするのに使われる。
「実現することでトンデモナイ何かが起きる」現象をアルゴリズムと呼ぶのは、どうしても違和感がある。
核融合とプルトニウム
次に、「核融合の逆放射」である。
TENETでは、時間が戻るメカニズムは、「核融合の逆放射」によるものだ、と科学者が推察している。
だから、逆行銃は放射線を出しており、放射線を防ぐ手袋が必要だったりする。
逆行世界では酸素ボンベが不要な「室内」エリアとして、放射線マークがついた天幕で演出されている。
しかし、核融合というわりには、出てくるものがプルトニウムだったり、ロシアの放射性廃棄物処理場だったり、やたらと核分裂臭いのが気になる。
まず、核分裂とは、ウランなどの重い原子が分裂する現象であり、分裂するとウランの燃えかすとプルトニウムが生じる。分裂を連鎖的に発生させることで高エネルギーを生み出し、原子力発電として応用されている。
一方、核融合とは、軽い原子が結合して重い原子になる現象であり、主なものでは水素がくっついてヘリウムになる現象であり、太陽の中で行われている。プラズマを起こして意図的に核融合を起こすことで、海水から発電できる夢のクリーンなエネルギーとして核融合発電が研究されている。
要するに、核融合では、ウランなどの重い原子は登場しない。
核融合と「プルトニウム」というキーワードは、どうしても結びつかない。
約100年後の未来の世界の話だからといって、核融合とプルトニウムが関連するといは思えない。
おそらくTENETの監督は、「科学技術的に新しい用語を使ってみたいから、核融合ということにしてみた」のだと思うが、その演出は、僕のような偏屈な理系修士卒からみると、すごい違和感を感じてしまうのであった。
普通に「核分裂に関するホニャララ」という設定にしてくれれば、違和感なかったのに!!
映画としては純粋に面白い!
色々と気に入らない理由はあるのですが、それを差し置いても、とても面白い映画でした。
実際、この記事を書きたくなるくらい、映画を見終わった後もTENETのことを考えてしまっている自分がいるし、
「あのシーンでは逆行と順行がどうなっていたんだ・・・?」とか2日に1回くらい気になってしまいます。
特に僕が好きなシーンは2つ。
空港で順行と逆行の主人公がやり合うシーン
タイムトラベルものでは、ドラえもんを筆頭に、「謎の人物だと思っていたら、実は未来の自分だった」という設定はよくある話です。
空港のシーンもそうですが、しかし、「相手を追い出したと思っていたら、実は逆行の相手は中に入ってきていた」という演出は最高にクールだなと思いました。
しかも、格闘して、殴ったり蹴ったりアクションしながら、結果的にお互いは反対のことをしていたという。こんな話は今まで見たことがないです。凄い!!
視聴者は最初に「逆行銃は弾が戻る銃だ」と思い込みますが、逆行世界では普通に弾を撃っているだけにすぎなかった、ということに気がつかされて、ハッとしました。
ラストシーンのニールの「ようやく会えた」感が長門有希
主人公の相棒のニールは、近未来から来ているので、自分を雇ったTENETリーダーの主人公は元から親友です。ダイエットコーラが好きなことを知っているほどの仲です。
しかし、近未来から逆行してきてニールが劇中で会う主人公は、まだ何も知らない主人公です。
そしてラストシーンで、ニールは死ぬ前に「これからTENET軍を作ると言う運命を理解した主人公」と、ついに会えた形になります。
この展開、どこかで見覚えがある。
涼宮ハルヒの憂鬱は高校生の話ですが、長門有希は3年前の中学生の時に、タイムトラベルしてきた高校生である主人公のキョン(ジョン・スミス)と会っています。
そこでキョンに対して少しの恋心が芽生えるのですが(恋心が芽生えるのは二次創作だったかも?)、キョンはタイムトラベルで元の時代に戻ってしまい、キョンのいない3年間を過ごします。
そして本編が始まると、長門は高校生となってキョンに会いますが、そこで会うキョンはタイムトラベルのことなど知らない、長門と初めて会うキョン。3年前に恋心を抱いたジョン・スミスではないわけです。
そして本編は進み、キョンが3年前にタイムトラベルする話が描かれて、タイムトラベルから戻ってきたキョン(=3年前のジョン・スミスの記憶を取り戻したキョン)と会って、「やっと会えたね」と涙を流すわけです。(涙を流したのは二次創作だったかも?)
この展開、TENETのニールの最後とめっちゃ似てませんか?
ニールは近未来の主人公と親友なのに、本編でニールが会う主人公は、まだ何も知らない主人公。
本編が終わりになって、自分の運命を理解した主人公に「ようやく会えたね」というわけです。
このニール=長門有希説が、僕がTENETを見終わったときの最初の感想でした。Twitterでもネタバレ覚悟でこうツイートしたわけです。
TENETを見た感想:雪、無音、窓辺にて
— メタラーまとん@はてなブログ (@Highso_ciety) 2020年11月7日
以上、メタラーまとんでした。
ではでは。