ども!まとんです。
「GAFA」という言葉が日本で浸透したのは、2018年7月に発売されたこの本の影響が大きいと思います。
the four GAFA 四騎士が創り変えた世界
そんな中、9カ月後の2019年4月、さらに気になる本が発売されました。
GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略
GAFAを目指す僕としては、これはチェックせざるを得ない!
ということで、読んでみた感想です。
読んだ人の立場
僕は、いわゆるJTBC(Japanese Traditional Big Company)のエンジニア、かつファイナンシャルプランナー2級の一児の父親です。
子供を私立医学部に入れるために、「2000万円/子供」を目標に、資産形成を進めています。
平成最後に教育資金を考える。つみたてNISAで資産を形成! - メタラーまとんがハイソにやらかすようです
さらに、二人目・三人目の子供を私立医学部に入れるためには、現職の年収カーブでは解が無いと試算。収入を上げるために、GAFAへの転職を企んでいます。
現状は、Googleに転職トライして失敗したところです。まだまだ諦めていません。
読んでみて、全体的な感想
GAFAと、中国のメガテックBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)について、創業者の逸話や、有名なニュースが纏められている本です。
GAFAについては、もともと知っている有名な話が多かったので、復習ができました。
BATHについては、あまり知識が無かったので、幅広い知識を効率良く知ることができました。
ファーウェイは、昨今の米中貿易冷戦でニュースになっていたり、新卒初任給40万で話題になっていたので、少し知識はありましたが、その他のBATHについては、なんとなく「アリババは中国のamazonかな」と思っていた程度の知識でした。
この本では、各社の社風や、ビジネスモデル、事業領域など、広くまとまっています。
筆者について感想
筆者の田中道昭さんは、企業戦略やマーケティング出身で、エンジニアではありません。
しかし、新しいテクノロジーについて技術的に注目すべきポイントや、社会へのインパクトについて正しく捉えているため、違和感なく読めました。
本全体を通して、筆者の独自な考察や未来予想が適宜盛り込まれており、面白かったです。
例えば下記のような考察が面白かったです。
アマゾンの場合、会計利益を上げ、配当をするようになったら、成長性に陰りが出た、つまり「売りサイン」であると判断すべきなのです。
引用:GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略
こういった発想は、エンジニアの視点からは出てこないと思います。エンジニアは、新しい技術やプロダクトを出し続けられるか、といった観点にフォーカスしがちなので。
300ページの中で、筆者の独自考察は分量が少なめでした。もっと筆者の考えを知りたいなと思いました。
1点だけ不満を。本の最後に「GAFAとBATHの状況を踏まえて、日本へのアドバイス」の章が設けられていますが、取って付けたような内容で、ちょっと投げやりだなと思いました。
たぶん、出版社から依頼されて、適当に後付けした内容なのかなと思ってしまいました。
真摯に「今の私たち日本はどうすればよいのか!?」と考えてこの本を手に取った人にとって、具体的なヒントを得ることはできなさそうです。
内容について感想
気になった内容と、僕の考察をピックアップして紹介します。
収益構造の観点から、アリババのビジネスモデルが良い
GAFAとBATHの各社の収益構造(どの事業で稼いでいるか)が円グラフで解説されているのですが、僕の感想としては、アリババの収益構造が最も強いと感じました。
アリババは、中国のamazonと呼ばれる、Eコマースを事業の中心としている会社です。
アリババは、メインのEコマースを含むコアコマース事業で、86%の収益を確保しています。
しかも、コアコマースの売上高営業利益率は、驚愕の47%。
一言で言えば、アリババは「メイン事業で安定して利益を上げている」会社です。
amazonとの比較
比較対象としてamazonはどうかと言うと、営業利益率は2~3%。つまり、メインのEコマース事業での利益率は低いです。一方で、クラウド事業(AWS)の営業利益率は24.8%と高い。
最近のアマゾンは「AWSで稼ぎ、Eコマースに投資するビジネスモデルを確立」と言われることが多いですが、見方を変えると「メイン事業で稼げず、サブ事業で稼いでいる」と見えてしまいます。
まぁ、アマゾンは利益を再投資する会社だし、AWSの将来性が盤石なので、これでよいのだと僕は思っていたのですが、中国ではアリババがメイン事業でちゃんと稼いでいる事実と比べると、アリババの強さがよく分かります。
Googleとの比較
Google(アルファベット)の収益構造は、85%以上を広告関連が占めています。
Googleは、検索エンジン、android、マップなど全てのサービスが、最終的に広告収入に貢献するビジネスモデルをとっています。
ブロガーとしては、Googleアドセンスなどのサービスで、Googleのビジネスを肌で感じます。
しかし、ここからは僕の個人的な意見なのですが、広告収入に頼るビジネスモデルってどうなんだろう?と疑問視しています。
広告業とは、広告を出したい企業と、欲しいモノを知り合い消費者のニーズを、仲介する際に生じる付加価値が本質です。
例えば、広告を出したいという企業がいなくなれば、破綻するモデルです。
他にも、テクノロジーが進歩してリコメンド技術が発展すれば、消費者は欲しいモノがすぐに目の前にある未来が来ます。その際、広告から得る価値がなくなるでしょう。
テレビも同様に、CMという広告収入で成り立つビジネスモデルなので、僕はテレビも嫌いです。
ここから、さらに踏み込んだ僕の意見ですが、Googleはビジネスが下手だと思います。
Googleは、ミッション「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること」で掲げているように、世界を良くすることにしか興味が無いように思います。
世界トップの技術で、世界を良くする、ひたすら良いヤツ。でもお金も稼がないといけないから、広告収入で、付加価値をつまみ食いしていく。
しかし、それでは最近はヤバくなってきたから、Youtubeのサブスクリプションサービスを始めたりして、別の利益を作ろうとしているが、後手後手な印象です。
まぁ、世界トップの人材を有する集団なので、ビジネスが後手後手でも「神」の地位が揺らがない。それが僕にとってのGoogleの印象です。
(なお、Googleについて辛辣なことを書きましたが、僕がGoogleの転職チャレンジに失敗したこととは、一切関係がありません。)
テンセントとの比較
テンセントは、LINEの中国版「ウィーチャット」を有しており、他にも様々な事業を持つ「テクノロジーの百貨店」と言える会社です。
しかし、収益構造としては、ゲームによる収益が65%。収益構造からみると、テンセントは「ゲーム会社」と言えます。
日本の歴史を見ると、オンラインゲーム会社は一時的に莫大な利益を上げて急成長し、その後失墜していく傾向があります。長く生き残っている会社は少ないでしょう。
なので僕は個人的に、「ゲームで食っている会社はマズい」と思っています。
中国は国策として企業を支援。官民一体の成長がすごい。
中国政府が2017年に発表した「次世代人工知能の開放・革新プラットフォーム」では、国策として、4つのテーマとその委託先が決められています。
アリババが都市計画を、テンセントが医療画像を、バイドゥが自動運転を委託されています。
具体的な投資額は記載されていませんが、昨今の中国が技術に巨額の投資をしていることは有名なので、その金額はすさまじいでしょう。
日本の国プロとの比較
日本と比較すると、日本でも数々の「国家プロジェクト(国プロ)」が進められています。
エンジニアとして身近なものは、経済産業省のNEDOや、内閣府のImPACTなどが、大学や企業に委託しています。
しかし僕の感触としては、日本の国プロによって、日本が具体的に良くなった、という事例を知りません。
国プロの実態としては、公募を勝ち取った大学の研究室や企業に対して、数年間にわたり巨額の投資をして、それらの大学や企業が優れた研究成果を生み出すことができる、となっていると思います。
国プロの予算によって、彼らは成長できますが、それが日本に還元されているかというと、どうなんでしょう。
もちろん、学問的な成果は生まれるので、それらはオープンイノベーションで世界に貢献しますが、税金を払った日本国民に還元されているでしょうか?
選ばれた研究室や企業が喜んでいるだけと感じています。
中国を良くする、というビジョン
一方で、中国政府は、「中国を良くするための投資」をとっているようです。
その結果として、バイドゥの自動運転バスが2018年には既に実用化されている(後述)など、具体的に技術が中国に還元されています。
そもそもBATHの特徴として、「中国を良くしよう」という思想があるようです。
特にアリババは、中国の沿岸部だけでなく、奥地の農村部も発展させようというビジョンがあるようです。
例えばアリババは、個人経営の「パパママショップ」がテクノロジーを活用して、生き残れるような事業を展開しています。
これは、amazonとは真逆の発想です。
amazonは、いわゆるアマゾン・エフェクトと言われるように、amazonの影響で地元産業を破壊していく現実があります。
amazonは「顧客第一主義」を掲げており、顧客とは消費者・販売者・デベロッパー・企業・組織コンテンツクリエイターと定義しています。
よって、顧客ではないモノを、amazonは救わないようです。
一方で、中国企業は「中国を救おう」という発想がある。
これは、GAFAになく、BATHならではの特徴であり、中国の強みだと感じました。
バイドゥは自動運転が世界で最も進んでいる
僕は知らなかったのですが、バイドゥは2018年に自動運転バスをスタートしており、既に中国全土で21カ所で展開、2018年7月からレベル4自動運転バスの量産化に入っているようです。
毎年ラスベガスで開催されている見本市のCES2019では、自動運転について、
・日本などの自動車メーカー:コンセプトカーの展示止まり
・Google:2018年12月にウェイモを限定スタート
・バイドゥ:2018年に既に21カ所で走っている
という様態で、バイドゥが最も自動運転の社会実装が進んでいると注目されたようです。
僕は、自動運転ではGoogleが首位かと思っていたのですが、バイドゥが凄すぎた。
この結果を引き起こしたのは、中国政府が国策としてバイドゥを支援していたことだと思います。
自動運転は法整備が最大の課題と言われていますが、国が後押ししてくれるバイドゥは、最高の環境の中で技術開発ができたでしょう。
日本なんて、「レベル4は当分不可能、レベル3も許可されておらず、法律をどうするか~」といった不毛な議論がされている状況にあるので、いかに中国に後れをとっているか。
政府が国策で後押しするという状況は、本当に強いです。
アリババのツァイニャオネットワークがすごい
僕は物流分野、特に倉庫内のロジスティクス技術についてはamazonが世界トップかと思っていたのですが、アリババの物流会社「ツァイニャオネットワーク」の方が優れている可能性がある、とのこと。
すぐにYoutube動画で調べたところ、ツァイニャオネットワークの動画を見つけました。
僕は職業柄、ロジスティクス技術をウォッチしていますが、今まで見てきた中で、最も最先端だなと感じました。
群制御で高速に動き回るロボットたちは、もはや生き物です。感動します。
アリババの技術力の高さに驚かされました。
最大の感想:中国情報はインターネットに少ないことを痛感
中国国内では「グレート・ファイアウォール(金盾)」によって、TwitterやYoutube、Google検索やFacebookなどにアクセスできないことは有名です。
そのため、普段これらを使って情報収集をしている僕としては、この本から得られたBATHの情報は新鮮なものばかりでした。
今回紹介したBATHの情報も、改めてネットで検索して調べても、一次情報にたどり着けません。
インターネットにあるのは、個人で中国を調べたブログ記事などばかりで、情報が少ない。
情報源をインターネットに頼り切っている僕としては、インターネットから情報が得られない状況は、恐ろしいと感じます。
中国のITが強いのは、規制の副作用?
中国はIT技術が進んでいますが、そのカギはグレート・ファイアウォールにあるのではないかと思いました。
中国人の友人は、グレート・ファイアウォールを突破してYoutubeなどを見るために、あの手この手を駆使していると言っていました。
例えば日本の大学に留学している学生は、大学のネットワークにVPN接続して、Youtubeを見ている人もいるとか。
中国は、一般的な若者が、VPNをバリバリ使って暮らしている国です。
国民全体のIT技術が底上げされているのではないでしょうか。
おわり
GAFAだけでなく、中国のBATHについても幅広く勉強になる一冊です。
みなさんも是非読んでみてください!
以上、メタラーまとんでした。
ではでは。